日本におけるブータン研究の基盤形成を目指して
Japan Institute for Bhutan Studies: JIBS

ブータン良いとこ 一度はおいで(ア ドッコイショ)

早稲田大学平山郁夫記念ボランティアセンター助教 平山雄大

ガサ温泉、コマ温泉、チュブ温泉、ゲレフ温泉、ドゥンマン温泉、ドゥル温泉…。ブータンには非火山性の温泉(ツァチュ)が点在しています。その数およそ10ヵ所。自動車道路から歩いて3日ほどかかる究極の秘湯もあれば、徒歩数時間かけてたどり着く普通(?)の秘湯、車で横付けできる手軽なものまでさまざまです。

まったくもって時季外れのとある夏の昼下がり、南部にあるゲレフ温泉にひとっ風呂浴びに出かけました。周囲に目に入るのは、チベット仏教を国の精神的遺産とするブータンではよく見かける仏塔や経文旗。それに並んでシヴァ神の肖像や石のリンガ(シヴァ神の象徴)※。5つある浴槽のうちの4つは円形で、高い壁に覆われたその外観はまるで井戸!この温泉は、数段の階段を下りて外部と遮断されたその井戸的浴槽に浸かるという、ブータンでも類を見ない斬新なスタイルなのです。男女混浴で、男性は下着のまま、女性はシャツやハーフパンツのままザブン。お湯は比較的ぬるめで、それぞれの浴槽で微妙に温度を違えています。夏場なので閑散としていましたが、冬は湯治客で溢れ、彼らのテントが周囲を埋め尽くすのだとか。

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ドンピシャリ温泉シーズンのとある冬の昼下がり、北部にあるガサ温泉にひとっ風呂浴びに出かけました。ここは2009年の豪雨で土砂に埋まってしまった後、施設・設備を拡充し生まれ変わったブータン最大規模の温泉です。到着してみると、学校が冬休みに入っていたので親子連れ(そして親戚一同)で来ている人も多く大混雑!浴槽の中はまさに芋の子を洗うような賑わいです。満員電車の中のような肌と肌の密着具合に怯みつつも、「嗚呼、これもまたブータン」と開き直って芋の子のひとつになっていると、老若男女分け隔てなく楽しめる憩い&癒しの場だということが徐々に理解できてきます。

ガサ温泉②

ブータンでは、温泉は湯治のため、宿泊グッズ一式(食糧、布団、テント等)を背負って赴き数日から数週間かけて滞在するというかたちが主流です。しかし、自動車道路が通じている温泉は日帰りの利用者も多いです。ガサ県の県庁所在地まで自動車道路が開通したのは21世紀に入ってからのことですが、インフラ整備が進み、ついにガサ温泉にも車で行けるようになりました。今後ますます訪れる人が増え、良くも悪くも開発が進んでいくのではないでしょうか。

※ブータン国民の約4分の1はヒンドゥー教徒で、特に南部では、ヒンドゥー教の影響も色濃く見られます。

WAVOCブータンコラム「助教 平山のブータンつれづれ(第4回)」より転載。
https://www.waseda.jp/inst/wavoc/news/2017/02/27/2439/