日本におけるブータン研究の基盤形成を目指して
Japan Institute for Bhutan Studies: JIBS

海士町×ブータン―海士町でのPBL短期研修―

日本海の離島に位置する海士(あま)町とブータンの相互交流に関して、以前会報140号に寄稿させていただきましたが、その後も交流は間断なく続いています。2024年1月20日から25日まで、JICA草の根技術協力事業(地域活性化特別枠)「地域活性化に向けた教育魅力化プロジェクト―ブータン王国における地域課題解決学習(PBL)展開事業―」(提案自治体:島根県隠岐郡海士町)の一環で、チュカ県内の高校の校長、教師、生徒を中心とした合計14名が来日し、海士町でPBLの短期研修を行いました。

PBLは、 Project Based Learningの略称です。知識の暗記等ではなく、生徒が自ら課題を発見し解決する能力を身に付けることを目的とした教育活動で、海士町にある島根県立隠岐島前高等学校では、島ならではの地域資源や課題を基にそれを実践しています。そして上記のJICA草の根技術協力事業は、チュカ県内の3つのパイロット校(チュカ・セントラルスクール、ゲドゥ高校、パクシカ・セントラルスクール)にて、ブータンの学校教育改革、地域活性化を担う人材育成に資するブータン版PBLモデルのツール開発や実施協力を行うものです。

今回の研修では、PBL現場の視察や体験(海洋プラスチックごみの回収とそれを利用したアクセサリー作り、海士町各地でのフィールドワーク等)、島前高校の生徒とチュカの高校生による学習成果発表、教員間の学習指導方法の意見交換等が行われました。合間には、島根県無形民俗文化財の隠岐島前神楽とブータンの踊りを通した交流会も行われ、また帰国前の東京滞在中には文部科学省での意見交換やお茶の水女子大学訪問もあり、毎日があっという間に過ぎ去っていきました。皆さんのこの経験が、ブータンでのPBLの拡充に役立つことを期待しています。

予想はしていましたが、ブータンの皆さんにとって、日本海の荒波の中を疾走する船は特に強烈な異文化体験だったようです。往路は問題なくフェリーが出ましたが、復路は波が高く本土に戻るフェリーが欠航してしまったため、予定を変更し小舟をチャーターして島前から島後に向かい、そこから国内線を乗り継いで東京に向かいました。

(文責:平山雄大)

島前高校の生徒たちと一緒に記念写真

※日本ブータン友好協会『日本ブータン友好協会会報 ブータン』第161号、8頁より転載。