日本におけるブータン研究の基盤形成を目指して
Japan Institute for Bhutan Studies: JIBS
第1回日本ブータン研究会を開催
日本ブータン研究会事務局 須藤 伸
5月29日(日)、東京・広尾のJICA地球ひろばにて「第1回日本ブータン研究会」が開催された。これはブータンをフィールドにしている研究者や大学院生が日頃の研究成果を披露し、意見交換を行う場を目指して企画されたものである。
この研究会は、日本ブータン友好協会及びGNH研究所の会員でもある私(青森市役所勤務)と平山雄大(早稲田大学大学院在学)が中心になって企画した。現在ブータンに特化した研究会がなく、ブータンを研究フィールドとするうえでの情報共有や人的交流が希薄になっている点を憂慮し、立場や専門分野を限定せず、多くの人に開かれた学際的な相互工場の場の創出を目指した。私自身、学生時代に卒業論文でブータンの農業を取り扱ったが、担当教員から指導を受けることができる専門分野とは違い、ブータンそのものに関する情報収集に苦労した経験から開催に至ったものである。
発表者と発表タイトルは以下の通りである。
発表① 藤原 整(早稲田大学大学院社会科学研究科修士課程)
「ブータンの情報化過程における特異性とその文明史的意義」
発表② 平山 雄大(早稲田大学大学院教育学研究科博士後期課程)
「ブータンにおける近代学校教育の歴史と現状―初等教育段階を中心に―」
発表③ 脇田 道子(慶應義塾大学大学院社会学研究科後期博士課程)
「辺境から眺めたブータンのツーリズム政策―牧畜民の村メラを事例として―」
また、日本ブータン友好協会副会長の森靖之氏をコメンテーターとしてお招きし、各発表や研究会への講評と、4年間のブータンでの援助の現場を経験された視点からのコメントをいただいた。
当日は研究者や学生、社会人等30名もの方の参加があり、発表者1人当たり1時間半の持ち時間が足りなくなるくらい活発な質疑応答が行われた。発表者の藤原整君に対しては、参加者の研究者の方々から今後の研究へのアドバイスもあり、若い研究者として有意義な会であったと思われる。
これほど多くの方に参加していただき、また参加者から次々と出される多岐にわたる質問と議論を聞いて、ブータン研究に対する関心の高さを垣間見ることができた。背景も専門分野も異なる3名の方の発表により、ブータン研究の新たな切り口を発見できる研究会となった。今回の発表や質疑応答を通じて、発表者、参加者共にブータン研究の新たな示唆を得ることができたのであれば幸いである。
研究会後には広尾駅付近の沖縄料理店で懇親会を開催し、自由な雰囲気の中、日頃の研究等について話を弾ませた。
今回は初めての研究会ということもあり、企画、運営等手探りの部分もあったが、今後とも定期的に開催していきたいと思う。
※日本ブータン友好協会『日本ブータン友好協会会報 ブータン』第111号、2頁より転載。