日本におけるブータン研究の基盤形成を目指して
Japan Institute for Bhutan Studies: JIBS

これまでのブータン勉強会を振り返る

早稲田大学平山郁夫記念ボランティアセンター講師 平山雄大

2013年4月から、毎月1~4回(通常は毎月1~2回)のペースで「ブータン勉強会」を開催しています。WAVOC提供オープン教育センター(当時)設置科目「地球体験から学ぶ異文化理解―ブータン王国での実践を通して学ぶ―」※1の盟友・須藤伸と同年同月に立ち上げた日本ブータン研究所(Japan Institute for Bhutan Studies: JIBS)※2の主要事業のひとつとして展開しており、2018年度は海士ブータンプロジェクト※3も主催に名を連ねています。

ブータン勉強会が目指しているものは、「発表者・参加者共に学び合える情報交換・意見交換・相互研鑽の場の創出」です。内容は研究者による自身の研究成果発表、「ブータンのプロ」と呼んで差し支えないであろうコアなブータンファンの皆さんによる超絶ディープな発表、JICA専門家や青年海外協力隊(JOCV)、シニア海外ボランティア(SV)の皆さんによる実務報告、「ブータン初心者」の高校生や大学生による実習報告、映像上映、ワークショップ…等何でもあり。ときに日本ブータン友好協会、日本ブータン刺繍協会、早稲田大学教育・総合科学学術院教育会、島根大学地域教育魅力化センター、島根県立隠岐島前高等学校、兵庫県立柏原高等学校、JICA九州、JICAブータン事務所といった他団体・他機関とコラボしたりもしつつ、「ブータン」という括りのみで繋がり、学び合ってきました。

第95回(2018年10月21日)。JICA専門家の津川智明さんによる発表。

第33回(2015年5月30日)。早稲田大学教育・総合科学学術院教育会とのコラボ開催。

本当に多くの皆さまからご支援・ご協力・ご発表・ご参加いただき、6年間途切れずに運営を続けることができました。今週末(2019年2月10日)に記念すべき第100回ブータン勉強会※4が早稲田にて開催されますが、これを機にこれまでの勉強会を振り返りたいと思います。

1. 開催回数・発表件数・発表方法

年度別開催回数。

年度別発表件数。

発表方法。全体の9割(130件)が個人発表です。

第1回ブータン勉強会から第100回ブータン勉強会までの全100回で、発表は合計143件、発表者は合計171人(143組)となりました。年度別の開催回数を調べると一番少なかったのが2013年度の13回で、一番多かったのが2015年度の20回。平均すると年に17回開催していたことになります。発表件数は2018年度が一番多く、また143件のうち約9割(130件)が個人発表、約1割(13件)がグループ発表でした。グループ発表をしてくださったのは、島根県立隠岐島前高等学校の「グローバル探究(ブータン)」に参加した生徒、WAVOC提供GEC設置科目「ブータンから学ぶ国家開発と異文化理解」の履修生等です。

第57回(2016年9月11日)。高校生によるグループ発表。

2. 発表内容・発表者の属性

発表内容の分類。多岐に渡っています。

発表内容はもちろん多岐に渡りますが、ざっくりと分類してみたところ上記のグラフの通りとなりました。歴史(15件)と教育(12件)に関するものが特に多いのは、どうも私の興味関心によるところが大きいようです。

発表者の属性。幅広いです。

発表者の属性を見ると、171人のうち約3割(49人)が研究者の方々、約2割(33人)がお仕事でブータンに関わられている方々(JICA専門家等)です。そして長年ブータンの諸相を追いかけていらっしゃる重鎮の皆さん(28人)、高校生(24人)、ボランティア―JOCV・SV―の皆さん(18人)、大学生(13人)、大学院生(5人)、中学生(1人)と続きます。この発表者の属性の幅の広さは、今ではブータン勉強会の特徴のひとつとなっています。

第36回(2015年7月11日)。雲南大学生態学・地植物学研究所教授の大澤雅彦先生による発表。「ヒマラヤの森林から日本の森林―そのルーツを探る―」。

第3回(2013年6月8日)。日本ブータン研究所研究員の高橋洋さんによる発表。「シャブドゥンの軍事キャンペーンとラマ五派のゾン」。

第64回(2017年2月11日)。短期留学で海士町の中学・高校に通っていた2人による発表。「ブータンと海士町での生活の比較」。

3. 参加者数

年度別参加者数。

私の把握している限り、第99回ブータン勉強会までの参加者は合計1,433人です。特に地方で開催する際は参加申込制を採らないことが多く、私も把握できていない参加者のかたを入れると実際は1,500人以上になるかと思います。年度別に分けると2年目以降は200人から300人の間を推移しており、第100回の参加者を加えたら、2018年度に始めて300人を超すことになります。ちなみに各回別の参加者数で一番多いのは、「ブータン青年海外協力隊30周年 平山修一『現代ブータンを知るための60章』改訂版発刊記念セミナー」(JICAブータン事務所、日本ブータン研究所共催)として開催した第98回ブータン勉強会の69名です。

全体を通して、ブータンに行ったことがない人、何十回も行ったことがある人、ブータンにあまり興味はないけれども何となく知り合いに連れられて来てしまった人、ブータンで働いている人、働いていた人、卒業論文でブータンを取り上げようとしている大学生、研究を進める大学院生等、知識や経験を異にする方々が入り乱れ、勉強会の主目的である「情報交換・意見交換・相互研鑽の場」としての役割がある程度有効に機能したのではないかと思います。

4. 開催場所

開催場所。東京都での開催が全体の6割(60回)。

それでは全100回、一体どこで開催していたのでしょうか。ダントツ1位は60回の東京都、2位は11回のティンプー県、3位は9回の島根県です。他には千葉県、宮城県(各3回)、大分県、熊本県、パロ県、タシガン県(各2回)、北海道、岩手県、福島県、京都府、兵庫県、マレーシア(各1回)。

ブータン国内での開催がすでに15回にも及んでいたとは驚きです。島根県(9回)というのはすべて海士町での開催で、そのうち7回は隠岐國学習センターの部屋をお借りしての実施でした。ここ数年は地方(及びブータン国内)での開催が増え、東京での開催数は全体の半数以下となっています。そのことに対する不満の声を頂戴することも稀にあり課題となっていますが、うまくバランスを取りながら、今後もフットワーク軽やかにどこにでも赴くスタイルを貫きたいと考えています。

第53回(2016年6月11日)。初の島根県開催。

第58回(2016年10月9日)。初の大分県開催。

第37回(2015年7月25日)。初の福島県開催。

第83回(2018年3月1日)。初のパロ県開催。

5. 開催場所in東京

開催場所in東京。早稲田大学での開催が全体の8割(47回)。

東京開催の内訳は、早稲田大学(47回)、JICA市ヶ谷ビル(9回)、お茶の水女子大学、日本ブータン友好協会事務所、カラオケビッグエコー人形町店、港鮨(各1回)です。

ブータン勉強会を始めた2013年4月に私は早稲田大学教育総合研究所の助手に着任し、2016年3月まで3年間、教育学部が入る16号館に勤務していました。そのため勉強会も最初の3年(第50回まで)は、早稲田で開催するときはほぼ毎回16号館の教室を使用していました。2016年4月からはWAVOC(99号館)にいるため、キャンパス内の教室予約ができない入学試験に伴う構内立入禁止期間を中心に、WAVOC3階教員室やミーティングスペースを使用することも多いです。

場所が見つからず急遽カラオケ屋さんで開催した第47回ブータン勉強会と、東京都の離島・大島のお寿司屋さんで開催した第65回ブータン勉強会も印象に残っています。

第82回(2018年2月17日)。早稲田大学(WAVOC3階教員室)にて開催。

第98回(2018年12月24日)。JICA市ヶ谷ビルにて開催。

第47回(2016年1月12日)。今のところ唯一の、カラオケ屋さんでの開催。

6. 開催場所inティンプー

開催場所inティンプー。カフェでも2回開催していました。

ティンプー開催の内訳は、ブータン日本語学校、津川智明さんのご自宅(各4回)、カフェ・ヒマラヤ&ベーカリー(2回)、颯らーめん(1回)です。

基本的に私のブータン出張に合わせて勉強会を企画し、日本語学校校長の青木薫さんとJICA専門家の津川智明さんにご相談し教室とリビングをお借りしてきました。2016年度からは上記の海外実習科目の実習中やWAVOC主催ブータンスタディツアーのスケジュールに勉強会を組み込むこともあり、おふたりをはじめティンプー在住の皆さまには学生ともども大変お世話になりました。また第93回ブータン勉強会はラーメン屋さんの奥の間を使わせていただいての開催となり、こちらもオーナーご夫妻には大変お世話になりました。この場を借りて改めて御礼申し上げます。

第5回勉強会(2013年8月11日)。ブータン日本語学校にて開催。

第67回(2017年3月5日)。津川智明さんのご自宅にて開催。

第93回(2018年8月26日)。今のところ唯一の、ラーメン屋さんでの開催。

100回目の勉強会が終わった後もブータン勉強会は稼動していきます。早速ですが、第101回ブータン勉強会※5は2月16日(土)にパロのオラタン・ホテルにて開催します。少々遠方ですが、「タイミングよくパロにいる!」というかたがいらっしゃいましたらぜひ参加をご検討ください。

※1 2006~2008年度に開講されていた海外実習科目(担当教員:坂本達、兵藤智佳)。
https://www.waseda.jp/student/weekly/contents/2006b/104k.html
※2 日本ブータン研究所公式ウェブサイト http://www.bhutanstudies.net/
公式Facebook https://www.facebook.com/bhutanstudies/
公式Twitter https://twitter.com/bhutanstudies/
※3 2017年度から始まった早稲田ボランティアプロジェクト(ワボプロ)のひとつ。
https://www.waseda.jp/inst/wavoc/news/2017/03/27/2560/
※4 「第100回ブータン勉強会」開催のお知らせ http://www.bhutanstudies.net/10861/
※5 「第101回ブータン勉強会」開催のお知らせ http://www.bhutanstudies.net/12905/

WAVOCブータンコラム「平山雄大のブータンつれづれ(第29回)」より転載。
https://www.waseda.jp/inst/wavoc/news/2019/02/08/4077/