日本におけるブータン研究の基盤形成を目指して
Japan Institute for Bhutan Studies: JIBS

露店をめぐる冒険(後編)

早稲田大学平山郁夫記念ボランティアセンター講師 平山雄大

お祭りの露店をひやかして巡り歩いてると仏具屋に行き着きます。仏具屋は、基本的にはお経、タンカ(仏画の掛軸)、マニ車(内部にロール状の経文が納められているお祈りグッズ)、そしてドゥン(チベッタン・ホルン)、鐃鈸、法螺貝といった楽器等を扱っていますが、中には併せてダパ(蓋つきの漆器)やバンチュ(竹製のお弁当箱)をはじめとした工芸品を揃えている店もあります。仏教が実質的な国教となっており人々の日常生活に浸透しているブータンでは仏具の需要は高く、お祭りの露店の中でも常に一定の存在感を放っています。

仏具屋。お客がドゥン(チベッタン・ホルン)を吹いて遊んでいます。

色鮮やかなタンカ(仏画の掛軸)。

食べもの屋は、意外と豊富なメニューを取り揃えています。売れ筋ベスト3はモモ(餃子)、ジュマ(ソーセージ)、チョウメン(炒麺=焼きそば)でしょうか。こういう機会に出店される食べもの屋は、屋台文化があまり発達していないブータンでは何だか貴重な存在のような気がして、私はついつい立ち寄ってしまいます。店内にはたいてい、甘いミルクティー「ンガジャ」やバター茶「スジャ」でくつろぐお坊さんと、昼間からジュマを肴にMade in Bhutanのビールを飲んでいるおっちゃんがいます。他にも、独立したお店としてアイスクリーム屋、コーラ屋、お菓子屋なんかが出ていたりもします。

チベット文化圏の王道ファーストフード、モモ(餃子)。

チョウメン(焼きそば)を受け取るお姉さんと、奥でくつろぐお坊さん。

ブータン国内でも製造されているビッグ・コーラのお店。

日本のお祭り・縁日の露店にある射的や金魚すくいのように、ブータンにも体を動かせる白熱ブースが存在します。その代表格は何と言ってもダーツでしょう。ブータンの国技はアーチェリーですが、クルという伝統的なダーツ(ダーツより一回りも二回りも大きく&重く、迫力があります)も人気があり、老若男女問わず真剣に楽しんでいます。

大きなお祭りは露店の規模も大きく、その一角に小型遊園地が出現することも。特に目立つのは味のある手動の観覧車(安全性は少々不安…)とエアー遊具(ミッ〇ーやドナ〇ドの顔がついています…)。ハイカラなところではウォーターボール等もあります。

ダーツ。的の真ん中に当たれば賞金ゲット!

クル。お坊さんも真剣!

子どもたちも熱中!

観覧車。緊張のあまり超真顔で乗っている子ども多数。

ミッ〇ー的なサムシングがついたエアー遊具。

こちらには、ドナ〇ド的なサムシングもついています。

今一番ホット(?)なアトラクション、ウォーターボール。

数ある露店の中でも一番の盛り上がりを見せているのは博打ブースで、場所によってはこれが完全に花形です。一般的にブータンの人は「ギャンブル好き」と言われており、例えば町から町への移動中に土砂崩れ等で車が先に進めなくなったとき等、自然発生的にドライバーさんやバスの乗客が集まり、道路でギャンブル(カードゲーム等)が始まります。主流はサイコロやカードやルーレットを使ったもので、子どもが参戦したり、ギャラリーが歓声を上げたり、皆さん自由気ままに楽しんでいます。

ルーレット。

電球(電気)を常備して、夜までやる気満々の博打ブースも。

子どもたちも一緒に楽しんでしまうのがブータン流(?)。

以上見てきた通り、露店にはブータンっぽいものもそうでないものも混在し、それらが一体となってお祭り文化の一部を形成しています。「ブータンつれづれ」では、いずれお祭り本体についても取り上げたいと思います。

WAVOCブータンコラム「平山雄大のブータンつれづれ(第28回)」より転載。
https://www.waseda.jp/inst/wavoc/news/2019/01/31/4056/