日本におけるブータン研究の基盤形成を目指して
Japan Institute for Bhutan Studies: JIBS
翔んでブムタン
早稲田大学平山郁夫記念ボランティアセンター講師 平山雄大
2011年12月18日から19日にかけて、ブータンの105回目の建国記念日(ナショナルデー、12月17日)に合わせて国内線の定期運航がはじまりました。国内線の営業を始めたのは、1983年2月11日に西ドイツ(当時)のドルニエ社製ドルニエ228(Dornier Do 228、座席数17)をパロ=カルカッタ間に就航させ、ブータン旅行に“飛行機での往復”という新たな選択肢を入れたドゥクエアー(Drukair)と、できたばかりのブータン航空(Bhutan Airlines/タシエアー)の2社です。
ドゥクエアーの機体はフランスのアエロスパシアル社とイタリアのアエリタリア社による合弁事業ATR製のATR 42-500。対してブータン航空の機体はスイスのピラタス社製ピラタス12(Pilatus PC-21、座席数8)。ちなみにドゥクエアーの機体は約50席あるものの、すべての席に人が乗ると飛び立てない(?)そうで、定員はその半分~3分の2ほど。
その後、ブータン航空は半年ほどで国内線に見切りをつけ国際線に参入しました。そのため現在はドゥクエアーのみが国内線の定期運航を行っています。
空港があるのは、唯一の国際空港でもある西部パロ県のパロ、中部ブムタン県のバッパラタン、東部タシガン県のヨンプラ、南部サルパン県のゲレフの4ヵ所。最新の2019年3月31日~5月14日のフライト・スケジュールでは、毎週月曜・水曜・金曜パロ⇔ブムタン(往復)、火曜パロ⇒ゲレフ⇒タシガン⇒パロ、木曜パロ⇔ブムタン(往復)及びパロ⇔ゲレフ⇔タシガン(往復)、土曜日パロ⇒ブムタン(片道)、日曜ブムタン⇒パロ(片道)及びパロ⇔ゲレフ⇔タシガン⇔ゲレフ(往復)となっています。
実際の飛行時間はパロ=ブムタン間、パロ=ゲレフ間、ゲレフ=タシガン間が片道20分ほど。パロ=タシガン間は直行便で片道30分ほどですが、陸路だと通常2泊3日かかるので、それと比べるとあっという間の瞬間移動と言えましょう。
メンテナンスのために空港が閉鎖されたり、天候や予約数に左右されてフライトが急にキャンセルされたり、お祭りの前後だけ1日何便も飛ばしたり…となかなかハラハラさせられますが、とある冬の日、パロからブムタンまで国内線に乗ってみました。
晴れていたら、ヒマラヤ山脈が一望できる左の窓側に座りたいところ。自由席なので座席確保にダッシュです。パロ空港を飛び立つとすぐに首都ティンプーの上空にさしかかり、チャンリミタン競技場、メモリアル・チョルテン(仏塔)、「ブッダ・ポイント」こと約50メートルの高さの大仏があるクェンセル・ポダン(寺院)をはじめとしたランドマークをけっこうがっつり見つけることができます。「あ、あそこにノルジン・ラム(ティンプーのメインストリート)が!」「タシチョ・ゾン(城塞/県庁兼僧院)、さすがに目立つわ!」等と言っているうちに機体はティンプーを越えて一路東へ。
左手にマサ・ガン(6,800メートル)、ジェジェカンプ・ガン(7,100メートル)、カンプ・ガン(7,212メートル)、テーブルマウンテン、チョモラリ・ガン(6,930メートル)、さらに人類未登頂の山々の中での最高峰ガンカル・プンスム(7,570メートル)等を眺めつつ、軽食と飲み物のサービスが。これが出たらもうあと5分で到着してしまうので、急いで平らげましょう(笑)。ちなみに曇っていると、ティンプーもヒマラヤ山脈も何も見えません。そうなると楽しさ9割減!
あれよあれよという間に、飛行時間20分でブムタンに到着。陸路でガタガタ揺られながらやっとこさたどりつくのが常であるブムタンに、こんなに楽して降り立ってしまって良いのでしょうか。ちなみに最新の料金設定(外国人料金)だと、パロ=ブムタン片道で192ドル(約2万2,000円)、往復で339ドル(約3万8,000円)。結構欠航するので(特に雨季は要注意!)うまく旅程に組み込めるか難しい、というか一種の賭けになりそうですが、旅の新たな選択肢として頭の片隅に入れておいても良いかもしれません。
WAVOCブータンコラム「平山雄大のブータンつれづれ(第37回)」より転載。
https://www.waseda.jp/inst/wavoc/news/2019/06/20/4689/