日本におけるブータン研究の基盤形成を目指して
Japan Institute for Bhutan Studies: JIBS

パールGがいっぱい

早稲田大学平山郁夫記念ボランティアセンター講師 平山雄大

デリーを中心にインド各地を旅して回っていた18歳の夏、私は「パールG」(Parle-G)というビスケットをよく買っていました。1つ4ルピー(当時のレートで約10円)の、女の子の絵がパッケージに印刷された素朴な味のビスケットです。日本の「ビスコ」をイメージすると分かりやすいかもしれません。毎日の生活費を切り詰めて旅を続けていた私は、紙で包装されたそのクッキーをときに食事替わりにし、1枚1枚を大事に食べたものです。

インド・デリーの「メイン・バザール」ことパハール・ガンジ。

パールGは1939年にインド(当時は英領インド)のパール・プロダクツによって製造・販売が開始された由緒あるビスケットで、2003年の調査では「世界で一番売れているビスケット」に認定されています※1。1980年代までは「パール・グルコ」という名称で、現在略称となっている「G」はグルコース(Glucose、ブドウ糖)とジーニアス(Genius、天才/非凡な才能)をかけているのだとか。パッケージをよく見ると確かに“G for Genius”と書かれています。

パールG。1つ4ルピー。

そんなパールG、ブータンでも売られています。首都ティンプーはもちろんのことダガナやタシガンといった地方にも広く浸透しており、全国どこでも「町」にある雑貨屋さんに行けば見つけることができます。日本の幼稚園に相当するECCDセンター(Early Childhood Care and Development Centre)では、おやつの時間に出たりもします。

幼稚園のおやつの時間。パールG、甘いミルクティーに合いすぎです。

ミルクやミルクティーにひたして食べたりもします。

紙包装からプラスチック包装になってからというもの、この15年ほどで内容量がどんどん減り、現在のサイズは42グラム(12枚入り)。ただし値段も安くなり1つ3ルピー。ブータンでは輸送コストがプラスされ、たいてい4ヌルタム(現在のレートで約6.4円)※2で売られています。10ヌルタムのビッグサイズや20ヌルタムの「パールG Gold」、インドのアニメとのコラボ商品「パールG Chhota Bheem」なんかもあります。

私は安くて美味しくて配りやすい食物系ばらまき土産として、また自分用にもよく大量購入していますが、最近は、海外実習科目や早稲田ボランティアプロジェクトでブータンを訪れた早稲田の学生たちもそれに触発されて(?)たくさん買っています。

パールGシリーズ。

大人買いしたパールGでピラミッド作り。

どうも、ブータンでは犬もパールGが大好きな様子。学生や大人たちが買って、道端で犬にあげている光景も珍しくありません。かつてインドで1枚1枚大切に味わって食べていたビスケットが犬に向かってばら撒かれているのを見るたびに、私はブータンの潜在的な豊かさを感じずにはいられません。これも喜捨の精神によるところが大きいのでしょうか、ブータンの犬は恵まれています。

パールGは日本でも、例えば新大久保のイスラム横丁等にあるインド系/南アジア系の雑貨屋さんで買うことができます(1つ100円くらいしますが)。要チェック!

パールGを犬にばら撒くブータン人。

ご満悦なお犬様。

※1 パールGの歴史は、公式ホームページに詳しく紹介されています。http://www.parleproducts.com/brands/parle-g
※2 インドルピーとブータンヌルタムはほぼ等価で、1:1の固定相場です。

WAVOCブータンコラム「平山雄大のブータンつれづれ(第24回)」より転載。
https://www.waseda.jp/inst/wavoc/news/2018/11/26/3902/