日本におけるブータン研究の基盤形成を目指して
Japan Institute for Bhutan Studies: JIBS

日本ブータン学会第2回大会を開催

日本ブータン学会 須藤 伸

5月19日(土)、京都大学稲盛財団記念館にて「日本ブータン学会第2回大会」が開催された。日本ブータン学会は、日本におけるブータンを対象とする学術的研究の発展及び普及を図ることを目的として2017年5月に設立された学会であり、学会誌の発行や研究大会の開催等を行っている。

今回の研究大会では、月原敏博第2回大会実行委員長(福井大学教育・人文社会系部門教授)の開会挨拶に始まり、京都大学大学院医学研究科の岡島英明准教授による基調講演に続いて、6人の研究者による研究発表が行われた。当日は62名の方にご参加いただき、活発な質疑応答が行われるとともに、ブータンを捉える視点も多様で内容の濃い学会となった。

発表タイトルと発表者は以下の通り。

  • 基調講演「ブータンへの医療支援における京都大学病院の取り組み」岡島 英明 准教授(京都大学大学院医学研究科/京大病院ブータン医療派遣団第1次隊(長期))
  • 発表①「ゾンカ語における音素の出現頻度について」西田 文信(東北大学)
  • 発表②「ブータン伝統農村集落における景観実態調査」吉村 晶子(千葉工業大学)
  • 発表③「ブータン南部マナス地域における自然保護活動―ロイヤル・マナス国立公園と周辺域のユニークな生物多様性―」岡安 直比((公財)日本モンキーセンター)
  • 発表④「ブータン村落社会内における格差」上田 晶子(名古屋大学)
  • 発表⑤「アジ・ケサンのイギリス留学を巡る基礎的文献研究」平山 雄大(早稲田大学)
  • 発表⑥「多言語国家ブータン王国における学校教育と言語」佐藤 美奈子(京都大学大学院)

研究大会に続いて、学会への入会者を対象とした第2回(2018年度)総会が開催された。第2回総会では、栗田靖之日本ブータン学会会長の冒頭挨拶に続き、前年度の事業・決算報告が行われるとともに、今年度の事業・予算計画及び新役員が発表され、会員の承認を得た。(総会での配布資料については、当学会のウェブサイト上にて公開しております。)

栗田会長による冒頭挨拶にて、学会誌『ブータン学研究』第一号の発行が発表され、会場にて会員向けに配布・販売が行われた。

学会誌に掲載された論文等は以下の通り。

日本ブータン学会学会誌『ブータン学研究』Vol.1,2018
《論文》

  • オレカ語の言語学的特徴について ―音声・音韻・形態を中心に―(西田 文信)
  • 2008年民主化以前におけるブータン・中国の二国間関係 ―インドの動向と併せて―(諸橋 邦彦)
  • ブータン王国シェムガン県トン集落の緑地ならびに植物の構成(吉村 晶子、菅 博嗣、永村 裕子、川崎 英明、石井 匡志、井手 勇人、タシ・ペンジョール、ウゲン・テンジン)

《研究ノート》

  • 「新しい文明開化」としてブータンの情報化現象を捉える試み(藤原 整)

《ブータン通信》

  • ブータン人の洗濯(都甲 由紀子)

総会後に京都大学楽友会館で行われた懇親会では、研究大会の時間だけでは聞くことのできなかった質問について、ざっくばらんな雰囲気の中で研究者との意見を交わす場になった。

本学会は2017年に活動を開始したばかりのまだまだ歴史の浅い学会であるが、設立以来、運営基盤の確立と事業の着実な実施を目指して活動を行ってきた。このような中で、京都大学における研究大会の開催や学会誌の発行を始めとして、初年度の着実な一歩を踏み出すことができたと考えている。日本ブータン友好協会の中にも、本学会の趣旨に賛同し、活動にご協力ご理解をいただいている方も多くおり、関係者の方々に深く感謝したい。

本学会は、今後もブータンを対象とした研究者の発表・交流の場として、日本とブータンの関係を学術面から支えるとともに、日本のブータン研究において中心的な役割を果たせるよう、活動を続けていきたいと考えている。

※日本ブータン友好協会『日本ブータン友好協会会報 ブータン』第139号、5頁より転載。