日本におけるブータン研究の基盤形成を目指して
Japan Institute for Bhutan Studies: JIBS
グローバル探究inブータン
早稲田大学平山郁夫記念ボランティアセンター講師 平山雄大
中央大学杉並高等学校、白鵬女子高等学校、立命館宇治中学校・高等学校、兵庫県立柏原高等学校等、ここ数年、いくつかの中高が生徒をブータンに派遣するプログラムを展開しています。
海士にある島根県立隠岐島前高等学校※1が実施している「グローバル探究(ブータン)」もそのひとつ。同校が採択されたスーパーグローバルハイスクール事業※2『離島発 グローバルな地域創生を実現する「グローカル人材」の育成』の枠組みの中で2016年度に始まり、現在4年目に突入しています。
高倍率の選考を勝ち抜いた4人のチーム―「島内生」と呼ばれる島前地域(海士町=中ノ島、西ノ島町=西ノ島、知夫村=知夫里島)出身の生徒と「島外生」と呼ばれる他地域・他県出身の生徒で構成―で4月から話し合いを重ね、「文化の継承」、「ブータンと日本の家族観の違い」といった探究活動のテーマを定めた後、島前地域での調査やブータン勉強会での発表を踏まえて7~8月にブータンへと向かいます。帰国後は探究活動の分析、全体のまとめ、最終報告等を行っていくという1年間のプログラムで、私は縁あって初年度から関わらせていただいており、彼らのブータン渡航のスケジュール作りや各種調整を担当し実際に同行しています。
2016年と2017年は全7~8日間の日程で西部を、2018年には全9日間の日程で東部を訪問しました。現地でのプログラムは学校での交流、インタビュー調査やアンケート調査、都市・農村でのホームステイ、その他各年の探究テーマに沿った活動。2019年は全11日間とこれまでよりも長めの日程を確保し、滞在前半はチュカ県で実施したPBL(Project Based Learning、課題解決型学習)ワークショップに参加し、ブータン人の高校生たちと一緒に「日本人観光客が思わずチュカ県を訪れたくなるような3分間の観光PR映像を作成する」というミッションに取り組みました。
滞在後半は2019年の探究テーマ「死生観と幸福度の関係」に沿った活動です。チュカ県から一路ハ県に移動し、死生観の違いが各々の「幸せ」にどのような影響を与えているのかを明らかにすべく、ラカン・カルポ(寺院)で学僧や参拝者にインタビューをしたり、ジュネダ(聖地)を訪れ堂守のおじいさんからお話を聞いたり…。「死ぬことは怖いか?」「生まれ変わりを信じるか?」「自身の幸せに影響を与えているものに優先順位をつけるとどうなるか?」といった質問を投げかけ、自分たちの考えや価値観との違いに驚き、また共通する点にも驚きながら、分析のための材料を集めていきます。
チームメンバーの適応力・突破力には目を見張るものがあります。町の人々や地元の高校生にアンケートをお願いする際、最初は緊張してなかなか思うようにできなかった声がけもすぐに慣れ、気づけば用意していたアンケート用紙がなくなり売り切れ御免状況に。そして、急遽印刷屋さんで追加印刷し続行!さすが選ばれし精鋭たちです。アンケートはティンプーとパロでも行い、最終的に100人以上から回答を得ることができました。
今年のチームメンバーは体が(かなり)丈夫で、ハードなスケジュールの中にあって誰も体調を崩すことなく、全員で一丸となって探究活動に取り組めたこともプラスとなりました。ハとパロでは農家でホームステイをさせていただきながら活動しましたが、空いている時間は乳搾りや農作業等のお手伝いを通して農村での生活を体験。もともと島前地域で生まれ育った島内生も、寮で共同生活をしている島外生も頼りになります。
今年の「グローバル探究(ブータン)」チームがブータンで何を見て、何を感じ、何を学んだのか。彼らはどう成長し、「死生観と幸福度の関係」をテーマに掲げた探究活動はどう結論づいたのか。2019年12月9日(月)に島前高校で開催される探究活動成果発表会にて、全校生徒+地域の皆さん他に向けて最終報告が行われます。乞うご期待!
WAVOCブータンコラム「平山雄大のブータンつれづれ(第42回)」より転載。
https://www.waseda.jp/inst/wavoc/news/2019/11/12/4973/